− 冬 −
テニプリ 手塚 国光
緑黄樹に葉が落ち、時折吹く北風に吹かれ
カサカサと音を鳴らし、ガラスの前を過ぎていく。
そんな外とは違って、寒いながらも暖房が効き
身を震わす事の無い部屋で
「もうダメ・・」
涙声が出て、消えていった。
「だから言っただろう」
溜め息交じりの言葉が続き聞こえれば、
「あの時は大丈夫だと思ったんだもん!」
勢いに任し、早口で出てきた言葉に
「何事も早めに始めるに越した事は無い」
先程と同じ音だが、溜め息はなく落ち着いた言葉に
「そうだけどさぁ・・・・」
こんなに難しいとは思わなかったんだもん・・・
声は再び涙声に戻り、次に聞こえてきたのは
言葉ではなく溜め息だった。
様々な音の声が聞こえるのか言葉が戸切れ
沈黙が続き、紙が動く音が何度か聞こえる中
「テストと言え、3年でしかも来年高校へ進学なら
全学年を纏めて出てくるのが当たり前だろう」
頭の上から聞こえてきた声に、
「そうなんだけど・・・・
3年間に習ったのなんて、量が多すぎて
どうすれば良いのか分からなくなってきて・・・」
眺めていたノートから目を離す事は無く、
ゆっくりと作られる言葉に、
「だから、一緒にやるか。
と、聞いたんだ」
それを断ったのはお前だろう。
そんな言葉が後に続きそうになり口を閉じ、
落ち込みながらノート見ている少女は
「うん・・・・」
首を動かし頷いた。
「オレは帰って勉強をする。
お前はどうする?」
問いかければ、顔が上がり視線が合えば
「勉強する」
「そうか」
先程の弱い部分が消え、意志の強さが解る
目と声と態度に頷けば
「私に勉強教えて下さい」
真剣な声が響き
「ああ」
是と頷けば、
「ありがとう!」
真剣な表情が一瞬に消え微笑んだ。
テニプリ 跡部 景吾
カタカタと風がガラス窓を揺らし、
いつの間にか出来た結露が水滴となり落ちてゆく。
カチカチと時計が時を刻み、
視線を向ければ夕方と呼ばれる時間だった。
「5時なのにもう真っ暗」
外を見れば藍色が広がり、ネコの爪の様な月が出ていた。
いつも窓側に座り、太陽の光で暖を取りながら、
手を動かしていく。
1目1目ゆっくり丁寧に編んでいく。
少しずつ形が出来上がり、コトの経過が目に見えて解ると
嬉しくなり、次へと進めていく。
手か出来上がり
足が出来
体を完成させ
顔を作るために手を動かす。
片手にかぎ針
片手に毛糸
同じ動きを繰り返し、
少し少し出来ていく。
出来上がった部分が出番を待ちどうしそうに待っている。
表情はどうしようか?
笑っている顔?
寝ている顔?
それとも
クリクリした目を付けてみようか?
想像するだけでわくわくしてくる。
後少し
もう少し
顔を作り、耳を編み上げ
手足を付けてゆく。
わくわくとうきうきが混ざり合い楽しくなり
笑ってしまう。
「もう少し待っていてね」
表情を付くのを待つ子に声をかければ
「オイ」
今までに無かった音が聞こえ
視線を動かせば、見慣れた人物が立っていた。
「こんにちわ、前生徒会長」
イスから立ち上がり、1礼をし、再びイスに座り
止まってしまった手を動かす。
わくわくもうきうきの消え去り、
ドコからか入ってきた独特の雰囲気に
居づらさを感じ、逃げ出したくなるも、悔しくて、
表情は無関心を表す、無表情に変えた。
先程まで浮かんでいたあみぐるみの表情は
消え去り、楽しかった気分が消え
心の中で溜め息を付き、
帰ろう・・・
未完成のあみぐるみと毛糸、かぎ針を片付け
机の上を綺麗にしてカバンを手にイスから離れた。
窓のカギを確かめ、電気のスイッチを切り
ドアにカギをかける。
何をする訳でもなく、横に歩いてくる跡部
足は職員室へと向け、カギの返却をし
昇降口へ行けば、
柱に背を預け、跡部景吾が立っていた。
いつ離れたのは解らず、
なぜ自分を待っているのか解らず、
声をかける事無く、家へと帰る自分の横に居る。
なぜ彼はココに居るのだろう・・・・
ホイッスル 功刀 一
キラキラ光る星
1つ1つを結んで形を作れば星座になった。
「あ!オリオン座だ」
リボンの形をした星座を見上げ白い息をだした。
今日は寒いなぁ・・・
星を見上げながら、いくつもの白い息を吐いてゆく。
刺す様に冷たい気温の中
もうすぐ帰ってくるかな?
空から視線を動かし街灯が何個も並ぶ道を眺める。
手の中にあるストップウォッチを眺めれば
後、数分で帰ってくる事を教えてくれた。
少し背伸びをして遠くを見る。
帰ってくるかな?
もう直ぐかな?
背伸びを解き、今度は飛び跳ねて眺めてみる。
「あ!」
2つの影が見え、
少ししてから、帽子の影が見え
握ってたストップウォッチの停止ボタンに指を添え
近寄ってくる人物を見つめた。
もうすぐ・・・
あと少し・・・
影の動きが早くなり、街灯に照らされ顔が見えてくる。
握る力を強め、視線を人物から外し
まっすぐ正面を見つめ、通りすぎるのを待つ。
一直線でかけてゆく瞬間、ボタンを押し
タイムを刻んだ。
「すごい・・・1分以上早くなってる」
止められた時間を眺め、
荒れた息を静める為、座り込んでいる3人に告げれば
「まだまだやな」
返っていた言葉に苦笑をするしか出来なかった。
息を整え、流れ落ちる汗を拭き
着替える為に部室へと足を進めていく、
3人の背中を見送り、
先程のタイムをノートに記入し、再び空を見上げた。
今度はカシオペアでも探してみようかな・・・
吐き出した白い息と共に上を向き、
ローマ字の『M』の形を探し出す。
カシオペアさえ見付けれれば
北斗七星が見つけやすくなるのに・・・
そうしたら、北極星だってすぐ見付かる。
ゆっくりと目を動かし、広い星空を見上げる。
アレかなぁ?
ん?違うかも・・・
街灯や家電などで見える星は少ないと言えども
いくつものある星を線で繋いで行くのは、
根気と集中力がいる。
あ、北斗七星!
先に見つめてしまった星に指を指し、
線を描く。
あった。
カシオペア
青白い星を線で結びMを作る。
うん。カシオペアだぁ
何度も何度も線をなぞり星座を作る中
「帰るぞ」
背中から待ち人の声が聞こえ、
「あ、はい」
空から人へと視界を変え、
先に歩いてゆく背中を小走りで追いかけ、横を歩く。
1人は話し
1人が話を聞く
今日のクラスの出来事から実兄まで
幅広く話される話に相槌はないが、返事や感想が返る。
そんな他愛の無い会話の中
冷たい風が2人に吹き付け、1人が身を振るわせた。
「寒い・・・」
小さく、何時もより大きい白い息の中に混ぜて出した言葉が
聞こえたのか
「コレ、使え」
ポケットから白いものを取り出し、投げた。
投げられた物を受け取り、不思議に触って入れば
温かみを感じ、冷たくなった手先に体温が戻り始めてきた。
「ありがとうございます」
微笑み、握り締める。
暖かいなぁ・・・
じんわりと伝わってくる熱にホッと息を漏らせば、
先程より少なめな白い息が空へ消えて行った。
握り方を変え、温かさを沢山の場所へ移動させ、
全体に温もりが伝わり、
「一先輩」
隣の人物の名を呼び、顔と視線を向かせ
「コレ、ありがとうございました」
ホッカイロを差し出せば、
「いらん」
そんな一言が返ってきた。
「え?」
思わず出てしまった驚きの声に
「オレは走ってきて、そげなもん持っていても暑いだけや」
だから、やる。
1瞬向けられた視線と言葉に、
「ありがとうございます」
どこか抜けた礼を言い、
暖を取りながら、他愛の無い話をし互いの家前で別れた。
「ただいま〜」
帰宅を知らせる言葉を言えば、キッチンから
「お帰りなさい、寒かったでしょう」
微笑みながら母の言葉に
「一先輩がカイロくれたから大丈夫だよ」
笑顔で返事を返し、部屋へと入って行った。
カズの心遣いを知るのはもう少し後のコト・・・・
ホイッスル 山口 圭介
藍色の空
キラキラと輝く星
マフラーやスカートの裾を動かす風が体に当たり、
寒いなぁ・・・
吐き出す息に混ぜ音の無い声が外に出た。
冬になり日が落ちるが早くなり、
まだ大丈夫だろう・・・
そう思い、本屋で立ち読みをしていれば、
フッと耳に入った会話に驚き慌て時間確認をすれば、
長針は8を指していた。
マズイ!!
後悔が心を支配するが、
ま、いっか。
直ぐに消えて無くなり、読みかけだった雑誌を戻し
欲しかった雑誌を手に取り
レジへと足を進める途中、
あ・・
視界に入った後姿に動きを止め見入ってしまう。
どこか嬉しそうに足と動かしまっすぐレジに向かう姿
数ヶ月ぶりに見た人物に動きを止めてしまうも
慌て後を付いてゆき、清算を終わらせ
手を伸ばし声をかけようとするが、
どう声をかければ良いのか解らず
上げた手を下ろし溜め息を付き、
情けないなぁ・・・
肩にかけていたスポーツバックを直し
店から出ようとドア前に立ち、手すりに手をかけ
体を店から出し、背中に人の気配を感じ
ドアを開けたままにしいれば
「ありがとうございます」
小さな声が聞こえ、視線を下げれば
目に入ってきた人物に息を止めてしまった。
「あ・・あのさ!」
咄嗟に出た声に自分でも驚き、慌て口を押さえるも
「山口・・くん?」
ゆっくりと紡がれた言葉に、心臓が大きくなった。
「こ・・んばんわ」
上手く動かない口を必死に動かし、引きつりながら笑顔を作れば、
首を少しだけ傾げ
「こんばんわ」
見慣れた表情の中に少し驚きの色が入りながらも
言葉が返ってきた事が嬉しくて
「良かったら一緒に帰らないか?」
思わず出た言葉に、
「あ・・いや・・・・
その・・・良かったらでいいんだけど・・・」
自信の無い声に
「良いですよ」
頷きと共に返された言葉が理解できず
呆然と立っていると、自転車を引きながら圭介の横に立ち
「乗せますか?」
視線を1点に集中させ
少し首をかしげながら遠慮しながらの言葉に
「あ・・ありがと」
頷きながら、肩にかけていたカバンを
自転車のカゴに乗せれば、
ソレが合図だったかのように歩き出した。
1つの白い息は何度も空へと上がり、
もう1つの白い息は相槌と共に地面へと消えていった。